- グリニッチの取り組み・広報
東京大学/JST ERATO 川原万有情報網プロジェクトの最終報告会に参加しました
こんにちは、グリニッチ広報の岡田です。
今回は先日私が参加した、東京大学のあるプロジェクトの最終報告会のレポートをお届けします。
東京大学/JST ERATO 川原万有情報網プロジェクト
私が参加したのは、東京大学大学院工学系研究科の川原圭博教授率いる「JST ERATO 川原万有情報網プロジェクト」の、6年に渡る研究の最終報告会です。
JST ERATO 川原 万有情報網プロジェクトでは、センサーネットワークやIoT機器がより自律的で能動的な人工物として作用し、自然物と共生して新しい価値を生むための「万有情報網」の構築を目指し、エネルギー、アクチュエーション、ファブリケーションの分野において先駆的な研究を展開してきました。
私たちグリニッチはこの内、「エネルギー」の分野のプロジェクトにインテリア協力として参加。
東京大学の高宮真教授率いる、部屋中どこにいてもワイヤレスで充電ができるという「マルチモード準静空洞共振器を用いた部屋スケール無線電力伝送」のプロジェクトでインテリア協力をさせていただきました。
報告会では6年間の様々なプロジェクトが紹介され、またそのような研究成果がどのように社会応用されているかのお話がありました。
例えばアクチュエーション分野の研究の社会実装として、「Poimo」という電動モビリティが発表されています。
Poimoはパーソナルモビリティとソフトロボティクスの技術を組み合わた、人が持ち運べるくらい軽く、やわらかく安全で、どこでも乗り降り可能な新しい電動モビリティ。公共交通機関と目的地をシームレスにつなぐファーストマイル/ラストマイルを担うことを目的としています。
必要な時に便利に使えて、必要でない時には姿を消す、そんな「ちょうど良い」道具なんだそう。
インフレータブル(空気圧)構造によるボディを軽量化、本用途に適したワイヤレス・バッテリーレス構造を無線給電グループと協力して開発しています。
「IoTの次を考える」大きなビジョン
後半は、万有情報網プロジェクトのグループリーダーと、コンセプトやビジョン検討等の議論に参加されたRe:public社の市川様、Takram社の緒方様によるトークセッション。
分野の異なる様々な研究者やアーティストが集まった本プロジェクト。
川原教授は異分野の繋がり・融合から生まれる新しい価値に期待され、プロジェクトメンバー70名以上が集まる合宿も実施されました。
プロジェクトの大きな一つのビジョン「IoTの次を考える」について、各分野それぞれの研究が持ち寄られ議論されたのだそうです。
そのような異分野の融合・異分野の領域が重なる部分から生まれたプロジェクトが、報告会では数多く紹介されました。
「具体的で明確な目的を先に決めて向かうプロジェクトではなく、"IoTの次を考える"という大きな漠然としたビジョンに向かい、それを探っていくプロジェクトであった」と、リーダーみなさんが語っていたのも印象的でした。
私たちグリニッチが暮らしの考え方の参考にしている北欧・デンマークには、「space10」というイノベーションラボがあります。
ここでは「次世代の持続可能な生活を探求するラボ」をテーマに、様々な国・分野の研究者が集まり、融合し、クリエイティブで面白い研究が日々行われています。
弊社代表の今田も現地を視察・研究するなど、その研究論文を参考に、これからの私たちの取り組みのヒントをspace10からもらっています。
様々な分野の研究者が、大きな漠然とした目的に向かって繋がり、技術・情報を世界に発信していく。
私たちに縁のある二つのプロジェクトに共通点を感じました。
Convivial:「共に生きる」というテーマ
報告会で何度も登場した、「Convivial(コンヴィヴィアル)」という言葉。
デザイン・イノベーション・ファームTakramの緒方壽人さんにより、川原万有情報網プロジェクトを束ねるテーマとして掲げられたものです。
(私たちにインテリア協力のお声がけをくださったのも緒方さんで、弊社の昔からのお客様でもあります。)
言葉通りの「Con(共に)-vivial(生きる):自立共生」のほか、「同じ場や時間を分かち合う」「生き生きとしたにぎやかさ」という意味もあったり、共に生きる対象も「人間と人間」「人間と自然」「人間とテクノロジー」など、一つの言葉に多角的な意味が込められているのだそうです。
川原万有情報網プロジェクトのテーマになった「Convivial」。
「カーム・テクノロジー(生活に溶け込み、人が無意識的に活用できるテクノロジー)」から「コンヴィヴィアル・テクノロジー(人間や自然と「共に生きる」テクノロジー)」へ、と緒方さんがお話されていましたが、
未だ専門的な知識や人間の手を必要とする「操作的な道具」としてのIoTから、環境と調和しながら人間とともに働いてくれる「Convivial(自立共生的)な道具」となるための次世代のIoTの研究が、川原万有情報網プロジェクトでは行われてきました。
出典:https://www.amazon.co.jp/Tools-Conviviality-English-Ivan-Illich-ebook/dp/B007558B04
Convivialという言葉は、かつて思想家のIvan Illich(イヴァン・イリイチ)「Tools for Conviviality(コンヴィヴィアリティのための道具)」の中で出てくるキーワード。
その中の「未来の道具は、人間が人間の本来性を損なうことなく、他者や自然との関係性のなかでその自由を享受し、創造性を最大限発揮しながら共に生きるためのものでなければならない」という言葉が、プロジェクトのテーマとしても紹介されました。
「自分らしく」、その人の魅力を「最大限に発揮する」。
それは、私たちグリニッチが掲げる「Life Place(心が満たされる居場所)」のテーマでもあります。
その人がその人らしくいられる空間を作るために、インテリア(快適な環境づくり)の観点から更に何ができるか。
私たちのこれからのものづくり・空間提案のアイデアにも、この「Convivial」という考え方が取り入れられるのではないか。
緒方さんが繋いでくださった、このプロジェクトとのご縁から、私たちのこれからを考えるたくさんの気付き・アイデアを頂きました。
広報 岡田
報告会はこちらのYoutubeで、現在もアーカイブ公開されています。
さらに、2021年 10月1日(金)~10月14日(木)の期間中、東京大学目白台キャンパスにおいて研究成果(プロジェクトで開発したプロトタイプなど)の静態展示を完全予約制で行う予定です。ご興味のある方はぜひご参加ください。