【ニューノルディックとは?】新しい北欧デザインの魅力と暮らしへの取り入れ方

北欧デザインといえば、シンプルで温かみのある空間づくりが魅力ですが、近年その理念を現代的に再解釈した「ニューノルディック」が世界中のインテリア愛好家から注目を集めています。

伝統的な北欧デザインの良さを継承しながらも、現代のライフスタイルや環境問題に対応した新しい北欧スタイルは、日本の住空間にも取り入れやすいデザイン哲学です。

本記事では、ニューノルディックの概念や特徴を解説するとともに、日本の住まいに取り入れるためのコツやおすすめブランドをご紹介します。シンプルでありながら機能的、そして環境に配慮したデザインの魅力を、あなたの暮らしに取り入れてみませんか?


ニューノルディックの概念と成り立ち

伝統的北欧デザインとの違い

ニューノルディックデザインは、20世紀半ばに世界的な評価を得た伝統的な北欧モダンデザインを基盤としながらも、21世紀の価値観や技術を取り入れた進化形と言えます。

伝統的な北欧デザインが「フォルム・フォロー・ファンクション(形態は機能に従う)」という機能主義に基づき、シンプルで無駄のない美しさを追求したのに対し、ニューノルディックはそこに「サステナビリティ」や「ローカル性」という現代的な価値観を強く反映させています。

また色彩面でも、従来の北欧デザインでは白やパステルカラーが中心でしたが、ニューノルディックではより大胆なコントラストや自然からインスピレーションを得たより幅広い色使いが特徴です。


ニューノルディック誕生の背景と哲学

ニューノルディックという概念は、2000年代初頭にスカンジナビア諸国のデザイナーたちが提唱し始めました。グローバル化が進む中で、北欧各国の独自性を保ちながらも共通の価値観を世界に発信するという狙いがありました。

特に2004年にデンマークのデザイナーや建築家が中心となって提唱された「ニューノルディック・フード・マニフェスト」の影響は大きく、食の領域から始まった地産地消や伝統の現代的解釈という考え方が、徐々にデザインや建築の分野にも広がっていきました。

この動きの背景には、大量生産・大量消費型の社会への反省と、持続可能な社会づくりへの北欧諸国の積極的な姿勢があります。単なるスタイルではなく、より良い社会を目指す価値観がデザインに反映されているのです。


5つの基本的特徴とデザイン要素

ニューノルディックデザインには、以下の5つの基本的特徴があります:

  1. シンプルさと機能性:無駄を省いたデザインでありながら、実用性を最優先する姿勢
  2. サステナビリティへのこだわり:環境負荷の少ない素材選びや長く使える品質設計
  3. 地域性と職人技の尊重:地元の素材や伝統的な技術を現代的に解釈
  4. 自然との調和:自然素材の活用や自然光を取り入れた空間設計
  5. 誰もが使いやすいインクルーシブデザイン:年齢や能力に関わらず多くの人が使いやすい配慮

これらの特徴は、家具デザインだけでなく、照明、テキスタイル、食器、さらには建築やインテリアデザイン全体にわたって適用されています。


ニューノルディックの魅力と現代的解釈

シンプルさと機能性の両立

ニューノルディックデザインの最大の魅力は、美しさと実用性を高いレベルで両立させている点です。装飾を最小限に抑えたシンプルなフォルムは視覚的な落ち着きをもたらし、小さな住空間でも圧迫感を与えません。

同時に、使い手の生活を深く理解した機能設計は、日常の暮らしをスムーズにします。例えば、収納家具は見た目の美しさだけでなく、実際の使用シーンを想定した仕切りや引き出しの設計がなされています。

またモジュール化された家具は、ライフスタイルの変化に合わせて組み合わせを変えられるなど、長期的な視点での機能性も考慮されています。


サステナビリティへのこだわり

近年のニューノルディックデザインでは、環境への配慮が一層強まっています。具体的には以下のような取り組みが見られます:

  • 持続可能な方法で調達された木材や再生素材の積極的な使用
  • 修理やメンテナンスが容易な設計による製品寿命の延長
  • 生産過程でのエネルギー消費や廃棄物の削減
  • 化学物質の使用を最小限に抑えた自然素材の活用

例えば、デンマークの家具ブランド「ムート」は、FSC認証を受けた木材のみを使用し、地元の職人による生産体制を構築。スウェーデンの「ストックホルム・フルニチャー&ライティング」は、廃棄されたテキスタイルを再利用した家具コレクションを展開しています。

これらのアプローチは単なるエコフレンドリーな姿勢を超え、本質的な品質向上とデザイン哲学の一部となっています。


自然素材と職人技の融合

ニューノルディックデザインでは、工業製品の冷たさを避け、人の手の温もりを感じさせる要素を大切にしています。機械による大量生産と職人技の絶妙なバランスが特徴です。

よく使われる素材には以下のようなものがあります:

  • オーク、アッシュ、バーチなどの北欧産の明るい木材
  • ウール、リネン、コットンなどの天然繊維
  • レザー(植物性タンニンでなめされたものが増加)
  • 陶器やガラス(手作りの風合いを残したもの)
  • 真鍮やスチールなどの金属(経年変化を楽しめるよう仕上げたもの)

これらの素材は単体で使われるだけでなく、異素材の組み合わせによる豊かな表情も特徴的です。例えば、木材とウールの組み合わせや、陶器と真鍮の対比など、素材感の違いがデザインに深みを与えています。


実践的なニューノルディックの取り入れ方

色使いとカラーコーディネーション

ニューノルディックの色使いは、自然光が少ない北欧の環境に適応した色彩感覚が基本となっています。具体的には以下のようなカラーパレットが特徴的です:

ベースカラー:

  • オフホワイト、ライトグレー(空間を広く明るく見せる)
  • ナチュラルウッド(温かみと自然感を演出)

アクセントカラー:

  • ダスティブルー、セージグリーン(北欧の自然を反映)
  • テラコッタ、マスタードイエロー(温かみと活気を加える)
  • チャコールグレー、ネイビー(引き締め効果)

色を取り入れる際のポイントは、全体的に統一感を持たせつつ、1~2色のアクセントカラーを効果的に使うことです。例えば、白壁の空間にブルーグレーのソファと木製家具を配置し、クッションやラグでマスタードイエローを差し色として使うなどの組み合わせが効果的です。

また、同系色でもわずかに色味の異なる複数の色を重ねる「トーン・オン・トーン」と呼ばれる手法も、ニューノルディックらしい洗練された雰囲気を作り出します。


素材選びのポイント

ニューノルディックスタイルを取り入れる際の素材選びでは、以下の点に注目すると失敗が少なくなります:

  1. 木材の選択:
    • オーク材:耐久性が高く、明るい色味で汎用性が高い
    • アッシュ材:しなやかさと強度のバランスが良く、木目が美しい
    • パイン材:柔らかく温かみのある印象だが、傷がつきやすい点に注意
  1. テキスタイルの選び方:
    • リネン:通気性が良く、使い込むほど風合いが増す
    • ウール:保温性に優れ、冬の寒い日本の住環境に適している
    • コットン:肌触りが良く、手入れが容易
  1. 質感のミックス:
    • マットな質感とツヤのある素材を組み合わせる
    • 柔らかい素材(ファブリック)と硬質な素材(木・石・金属)のバランス
    • 異なる質感の組み合わせで奥行きを作る

日本の住環境に合わせるなら、湿気に強いアッシュやオーク材を中心に選び、梅雨時期も快適に使えるリネン混の素材を取り入れるのがおすすめです。


ニューノルディックを代表する注目ブランド

1. HAY(ヘイ)

  • 特徴:手頃な価格帯で北欧デザインの良さを広めることをミッションとする若いブランド
  • 代表作:「About A Chair」シリーズ、「Mags」ソファ
  • デザイン哲学:現代的な生活スタイルに合わせた機能性と遊び心のあるカラーパレット
  • 日本での入手方法:直営店(東京・大阪)や公式オンラインショップで購入可能

2. Muuto(ムート)

  • 特徴:「New Nordic」を最も象徴するブランドの一つで、若手デザイナーの起用に積極的
  • 代表作:「E27」ペンダントライト、「Fiber Chair」
  • デザイン哲学:北欧デザインの伝統に新しい視点を加え、サステナブルな製品開発に注力
  • 日本での入手方法:インテリアセレクトショップや公式オンラインリセラーで購入可能

3. Ferm Living(ファームリビング)

  • 特徴:インテリア小物や子供向け家具など幅広いアイテムを展開
  • 代表作:「Plant Box」、「Ripple Glass」シリーズ
  • デザイン哲学:シンプルな幾何学デザインと豊かな素材感の融合
  • 日本での入手方法:セレクトショップや輸入家具専門店などで購入可能

 

まとめ:ニューノルディックがもたらす豊かな暮らし

ニューノルディックデザインは、単なるインテリアスタイルの一つではなく、より良い暮らしのための考え方でもあります。

本記事で紹介した特徴や取り入れ方のポイントを参考に、あなたらしいニューノルディックスタイルを見つけてみてください。すべてを一度に変える必要はありません。小さなアイテムから少しずつ取り入れ、自分の暮らしに合ったスタイルを育てていくことが、結果的には長く愛せる空間づくりにつながります。

サステナビリティへの配慮、機能性の追求、そして心地よさを大切にする北欧の知恵は、現代の日本の暮らしに新たな価値をもたらしてくれるでしょう。

北欧の人々が大切にしている「ヒュッゲ(居心地の良さ)」や「ラゴム(ちょうど良い)」といった考え方は、忙しい現代社会に生きる私たちにとって、改めて見直すべき大切な価値かもしれません。

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