日本が江戸時代後期であった1866年、デンマークでは一般の人々が日常に不可欠な食品をより最適に入手出来る よう、地域神父クリスチャン・ソンネが流通の仕組みを構築し、FDB の前身となる協同組合を結成しました。
その後、デンマークのユトランド半島で日常生活協会を統括していたセブリン・ヨーエンセンは、ソンネが発足 したような仕組みを持つ様々な分野の協同組合を一つに束ね、1896 年1 月1 日にFDB=デンマーク生活協同組合 連合会を設立しました。そして1942年にインテリア事業の角度から消費者の生活水準向上を目指し、FDB 内に 家具部門が組織化されFDB モブラーは誕生しました。
「丈夫で、美しく、機能的、そして手軽な価格」という当時としては画期的で過酷な開発条件のもと、妥協のない 商品開発と職人たちの巧みな技術力、北欧の歴史や地勢によって育まれた文化、その全てが必然性を持って混ざり 合い生まれたFDB モブラーの家具は、デンマーク国民の暮らしをより豊かなものへと変え、それはまた人々の 美意識をも向上させることに繋がりました。
デンマーク近代家具の父と称されるコーア・クリントに師事したボーエ・モーエンセンがFDB モブラーの初代 企画デザイン担当責任者に就任し、ポール・M・ヴォルタが2 代目を務めました。ハンス・J・ウェグナーなど 名だたるデザイナーがプロジェクトメンバーに名を連ね、数々の名作を世に送り出し、それらはその後に生まれた デンマーク家具の模範となり、今日目にする数々のデンマークデザインが生まれたのです。
「ハンス・オルセンの工房で修業した後にThe School of Arts and Craftsを卒業、マイスターの資格を得る。卒業後はThe Danish School of Art and Desigで教師として若手デザイナーの育成に尽力した。
1949年にウェグナーに紹介され、FDBに入社。翌1950年にはモーエンセンが勤めていた企画デザイン担当責任者を引き継ぎ、彼の「家具は人々の生活を向上させる」という信念も同時に引き継ぎ、指針とする。
モーエンセンが家具により行った人々への職や金銭の確保でなく、手に取りやすい機能性とシンプルさ、手軽さを強調した「J46」はFDB最大のヒット商品といわれており、 1950年代のデンマーク家具職人ギルドの展示会では毎年のように出品されていた。
FDBを1956年に退職すると同時にデンマーク国内の応用芸術学校で再び教師となる。彼の指導によりそのシンプルなデザインをベースとして用いるデザイナーは多い。
デザイン・機能面では完璧主義で、流行などの短命な家具を嫌がり、丈夫でシンプルなデザインを多く遺している。 ウインザー家具を源流とする現代スウェーデン風のペグチェアをモデルとし、デンマークの人々の暮らしの質を向上させた。
代表作に『J46』『J48』『コロナチェア』などがある。